幾春別川(桂沢地区)
 i-Cupの瀬などのスポットづくり

〜周辺の歴史とカヌー利用について〜
                 三笠CC 高篠

 桂沢スキー場近くの桂林橋からi-Cupの瀬の上流のクランクカーブまでは古くは2曲がりの蛇行があった。これは50年前桂沢ダム建設に合わせて浄水場の天日乾燥床のための敷地を造成するためと、農家の畑に川の浸食が及ばないようにと直線化されていた。

 そのような訳で上記の区間から下流の健康増進センター前の観覧席にかけての区間は単調で、その下流の通称桂沢神居枯潭と呼ばれる自然の渓谷部分の複雑かつカヌーに最適な環境と比べると物足りなかった。

 そこへ15年前長野県のアウトドア学校でもあるサンデープランニングが、この地を最適なカヌースポットとして評価し、ダガーカップを開催した。その折、単調な部分に岩を置くことによって川本来の瀬や淵ができてカヌーの楽しい空間になることをY校長が絵に書いて教えてくれた。そこからが私の河川事務所との瀬づくりの始まりである。

 瀬づくりはいきなりできたわけではなく、最初は三笠カヌークラブとして川の清掃などの活動を進めていたが、よりパワーアップするために市民を巻き込んだ「三笠の湖・川・緑を愛する会」を11年前発足させ、河川管理者を敵としてでなく、味方としてよりよい河川環境づくりの関係作りを図った。川の緑化、川遊びなどのイベントを通して利用者と河川管理者との良い関係を作っていくことができ、幾春別川の各所にカヌー桟橋・観覧席・ポーテージやアプローチ用の歩道などから、北海道第1号の「水辺の楽校」もつくっていただく程になった。前出の会は現在NPO法人「三笠森水遊学舎」として川や自然に親しむ団体として活動を引継ぎ発展している。

 そのような活動やカヌー利用という理解の上で、瀬づくりの最初は10年位前巨岩をダム近くの採石場から供給していただき、突堤護岸を20箇所くらい作ることから始まった。その後洞爺湖近くの壮瞥から巨石も数10個運搬し、サンクネットに石を詰めての多自然型工法での護岸工事のかたわらi-Cup付近の瀬づくりも進んだ。

 5年位前春先のダム堰堤上からの放流でかなり流失した後、巨石の数や配置、優先順位などのプランを描いての提案が了解され、1週間かけ大々的に修復工事が発注された。工事業者も腕の良いオペレーターが我々の意を汲んでくれた作業をやってくれた。東北海道カヌー振興会のF氏も海外の例からアドバイスを頂いた。一番は3年位前から流体力学の理論を組み入れて、実践協力を頂いたM氏の頭脳とパワーによって、その後の修復で急速に瀬作りが完成の域になっていった。私は経験と感でパワーショベルの運転手と阿吽の呼吸で岩を置くだけだったが、M氏は高さ、放流幅、袖の高さなど、計算から割り出された値から設計プランにあわせてのアドバイスをもらった。何回かの修復の度にバックウォッシュを伴うウェーブやホールつくりに発展し2005年2月にほぼ3つの瀬の現在の形が出来上がった。

 この後からは賛同してくれた多くのパドラーも岩積みに協力してくれ、腰の疲れをかばいながらも人力石積みで重機作業後の手直しでは多大なる応援を頂いた。またTドクターからは実弾の援助も頂き、河川管理者も即了解の上、2005年の秋と今春に2回にわたって重機による修正工事も加えられた。

上空から幾春別川のi-Cupの瀬を
      覗いてみると、このような感じです!
       (2007.06.18 i-Cupの瀬にて)
 その様な行政や多くの方の理解と協力のお陰で、ある意味手作りローコストで素晴らしいウェーブやホールのスポットが3つもできあがり、現在多くのフリースタイラーが感動しつつ、瀬を楽しんでくれている。春から夏にかけて長い期間の水量の豊富さのお陰とウェーブの多様さで利用者の技術アップも図られ、初級者から上級者まで程よい練習場として、またイベントの場として評価が広まっている。水量が変化しても3つのウェーブが遊び方やレベルに合わせて楽しむことができる。

 一方灌漑放流発電が終わると今度は多くの釣り人が来て楽しんでいる。瀬や淵ができたことによって前出の愛する会やNPO法人が放流したニジマスやヤマベの生息環境にも貢献している。

 昨年から比べると平日利用者も増え、休日で20人、平日でも平均5人くらいの利用が見られる。今シーズンでイベント時の見学者も入れると4月から現在まで140日として延べ1500人は訪れている。このカヌー環境の成功例が各地に伝えられているようで、かつては旭川で、現在は応用として札幌でも親水ウォーターパークが施工されると聞く、さらに尻別川からも近々視察に来ると言う。多くの川にこのようなスポットが増えてくれることも利用者の集中化を避けるために必要なことであろう。

 シーズンの週末は順番待ちができる程であるが、利用者が増えるとどうしてもトラブルが生じるもの。オーバーユースになると利用者のマナーや施設の充実などが心配になってくる。川は自由使用ではあるが、利用者も色々な価値観や遊ぶスタイル、考え方が異なる。フリースタイルのテクニックを磨く者、ゆっくりサーフィンを楽しむ者、初心者から上級者まで人それぞれ色々な考え好みがある。それらを認め合いことは勿論、お互い様の気持ちで楽しく、仲良く利用してくれればと思う。そのためには「声かけ、挨拶」のコミュニケーションが肝心。会話がお互いの信頼感、親近感、情報交換などで仲間作りもできる。これからはi-Cupの瀬の脇でもっとコミュニケーションを持ち、より楽しいスポットになって欲しい。

 自然豊かな、川本来の自然の営みの中で変化する部分はいじるべきではないが、すでに人間がかかわって不自然になった部分をより良いカヌー環境づくりを目指して改良してきたつもり。今後は他の地域でも瀬や川づくりにパドラーの視点だからこそ可能な設計プランや自然工法で、地域や管理者の了解のもと、できる所から実現させたいものだ。

          平成19年8月31日

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